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ふたりに対して、偽善者と罵ることができない。今まではずっとそうしてきたのに。踏みつけて受け取らないようにしてきたのに。優しさを受け取る価値なんてない人間だから。
そんな心の奥底にある気持ちを、酒が入ったことで簡単に白状してしまうなんて、誰にも話したことのない感情を吐露してしまうなんて。きっと御蔵夫妻も困惑しているにちがいない。
最終的には見捨てられてしまうだろう。いつだってそうだった。
ふわりと、御蔵妻が俺の髪の毛を撫でてきた。
母親がいたらこんな感じだったのだろうか、という思考が自動的に浮かび、また、そんなことを考えてしまった自分を責めたくなる。
「そうね。生きる価値が貴方にあるかどうか、わたしは知らないわ。だって、価値があるかどうか決めるのは、わたしじゃないから。わたしに言えることは、ただひとつ、……」
肝心な部分を聴きたかったのに、俺の意識はまたもや遠のいていくのだった。
*
「あ」
自分の声で目の覚める真夜中。
頭が割れるように痛い。たった少しのアルコールでこうなるとは恥ずかしい。
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