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あの頃の隼の様子はどうだったろう。記憶を辿る。
平日はお互い別々の場所で過ごすのだから、お互いなにをしてるかなんて知る由もない。なんかオタクっぽい陰キャだとは知っていたが、隼がこれ程までとは。
大きくため息をついて、私は言う。
「隼はさ。自分でなに言ってるかわかってる?」
力強く首肯する隼の瞳に、情熱的な光が宿る。
マジで言っている目。
こわ……。
えっと。神楽坂雅もドン引きだぞ。
呆れてものも言えないとは、きっと今。この状況のことだ。
「隼……彼女はアイドルみたいなもんなのよ?本気になってどうするの?」
「うん。それは、わかってる。……でも。好きなんだ。それに夏美にも悪いし。ちゃんとケジメつけないとかなって……」
「…………」
とりあえず冷たい視線を投げてみる。
「もう。雅ちゃんしか愛せないんだ!!」
効果なし!
はーー。キモいなぁ。もう判推しちゃおうかなぁ……
「ねえちょっと、冷静になってよ。だいたいファンの一人にしか過ぎない隼が、彼女と一緒になれるわけないでしょ!」
「わかってるよ!そんなこと!だから、いろいろ考えて。悩んで。こうして、準備してきたんだ」
「準備って、何よ?」
「俺もVちゅうばーになる!」
なにを言っているんだろう、こいつは。
「バカなの?で?二次元で付き合えると思ってるの?」
「俺だってそこまでバカじゃない!」
「いや。もう十分バカだって。Vちゅばーにガチ恋して、離婚しようとする時点でバカだって!」
隼は立ち上がって出ていこうとする。
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