7人が本棚に入れています
本棚に追加
離婚届……
その三文字に、私は目を疑った。
五日ぶりに会って、夕食後、ダイニングテーブルに隼が差し出したものは、離婚届の用紙だった。
意味が分からない。
「何これ」
「ごめん」
そのまま、隼は黙り込んでしまった。
一気に室内の音が消えて無くなった。
理解するのに時間がかかった。悪いジョークのつもりかとも思ったが、そうではないらしい。
「別れたいって……こと……?」
「うん」
「なんで」
食い気味に聞く。
心の中で「なんで」がずっとリフレインしている。
どういう状況だろう。青天の霹靂っていうのはこういう時のことをいうのだろうけど。
雷に打たれるというよりむしろ、もっと、どこか他人事のようだ。
遠くの落雷のせいで停電して、パソコンがダウンしたみたい。
頭が真っ白になった。
「なんで。急に……」
私は隼の言い訳を待った。
彼は迷っているいみたいで、目が泳いでいる。
「実は……好きな人が、できた」
「は?」
サーッと血の気が引いていく。力が抜けてしまう。声を出す力すら出ない。
たぶん息をすることも忘れていたと思う。
それと同時に、別の自分が頭を回転させていた。ほとんど空回りだけれど。
私の生活は?これからどうなるの?離婚?バツイチ?結婚まだ二年目なのに。なんで?なんでこんなことになるの?私のせい?最悪だ。なんで?なんでこうなった?意味がわかんない。好きな人?は?なにそれ、最悪じゃん。最低。は?なんで?浮気?え?え?隼が?嘘。は?は?は?
最初のコメントを投稿しよう!