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がちゃ。
「お邪魔します……」
「どぞどぞ〜」
女性の家に入るのは初めてなので、健は緊張していた。
それは家に招き入れた若菜も同じだったけれど、彼女にとって健ほど相性の良い男の子は今までいなかったので、これからする事への期待の方が大きかった。
「さあさあっ!マスクなんてさっさと外しちゃってさ、ココ座ってよ!」
そう言いながら若菜は健をリビングに招き入れると、早くも興奮しながらフワフワなカーペットを叩く。
「……うん」
健はカーペットの上に座ってから、一瞬躊躇ったけれどマスクを外した。
「ふふ、ステキ……」
若菜は満足そうにさらに健に近づいて、とろりとした瞳で彼の顔を覗きこむ。
若菜の火照った眼差しは、健の目を彼女の顔から逸らした。
健にとって、若菜は本来どう考えても彼と釣り合わない美人だ。
特に、その絹のように滑らかな肌は、一目するだけで飲み込まれてしまいそうなほど魅力的だった。照れてしまうのも当然。
「私はずっと貴方のような人を求めてたんだわ……」
若菜の手が愛おしげに健の頬へ触れる。
「……大好きよ」
そう言って、若菜は一つ、口づけを贈る。
「……ああ……綺麗なニキビね……惚れ惚れしちゃう……」
「ふふふ……ぷっくりさせちゃって……それも一つや二つじゃない、ざっと数えるだけで十個はあるわ……ほらここには新しいニキビもできかけてる。貴方、本当に凄い!」
若菜が健の頬や鼻頭を撫で続けて十五分くらい経っただろうか。
段々と貧乏ゆすりが激しくなり……健に掛ける体重が大きくなり……
撫でるだけで我慢するのも、もう限界のようだ。
「ねえ……ニキビ、潰してもいい……?」
二人の激しい呼吸が部屋中に響く。
健は自分の目の前で今起こっている事を現実だと思えなかった。
彼も冷静さを失っていた。
「……いいよ」
それが引き金だった。
若菜は健を押し倒し、彼の胸の上に乗る。
同時にへへへと笑みを洩らしながら、彼に左を向かせ、右頬に両手を添える。
「ニキビの中でも炎症を起こして目立つようになったものが赤ニキビ」
言いながらカリカリカリカリと硬くなった角層を爪で弄る。
「私は何故だかニキビができない体質だから、ず〜っとニキビを潰すのが憧れだったの。背徳的でいけない事やってるって感じがするでしょ?」
焦点の合っていない瞳は瞬きを忘れている。
ついに若菜は健のニキビを覆っていた角層を毟った。
「うへへ……穴開いた……やったぁあぁああ……」
興奮で声が震えている。
「じゃ、あ……血ぃ出すね?」
滑舌がままならない。
口は半開きになって舌が見えている。
下唇がよだれで卑しく濡れていた。
若菜は何とか右手でニキビを摘む。
「ぃくね?」
ゆっくりと力を加えていく。
指に油が付着するのを感じる。でも嫌な感じはしない。
指先がしっとりしてきた、というのがぴったりな表現だろう。
ある程度強く摘んでから、指先で転がす様に擦り動かすと、指の腹とニキビの間が赤い液体で濡れた事が触覚にも視覚にも分かる。
若菜が嬉々として自分の指を見ると、リンパ液で薄まって粘性の無くなった血が両指にべったりと付着していた。
「ぃひひ……ニキビの血ぃ付いちゃったぁ!ニキビ潰しちゃったんだ!やった」
ペロッ
そのまま両指を舐める。
「えへへ、おいひいや……」
口角は上がりきって、頬には普段はないえくぼが浮かび上がっている。
それほど若菜の顔は普段の彼女のそれと比べて歪んでいたけれど、彼女にそれを気にする様子はない。
彼女には、もう次のニキビしか見えていなかった。健の鼻頭のニキビを触りながら、誰に話すともなく言う。
「赤ニキビの中でも炎症が激しくなって、膿が外から見える状態になっているのが黄ニキビ」
さっきと同様に、爪を使って硬くなった角層を毟り取ってから。
「ここ、吸っていいよね?」
健に答える元気は残っていなかったし、若菜も返事を聞くつもりが無かった。
若菜は健の鼻に齧り付く。
むじゅうぅぅぅ
んんンん……
ちゅぅうっぅううぢゅ
ぷはぁ
ぶじゅるるるるるるる
ぷへへぇ
「だいすきぃ……」
びゅぼむじゅるるるるる
ぢゅぼばでゅびゅゅゅぅうぅぅ
「はぁ愛してるぅううん!」
はぁはぁはぁはぁ……
「ふぇへへ……貴方の膿って人よりしょっぱいんだね……」
若菜はついに出会った運命の彼氏と、熱い抱擁を交わす。
こんなに美味しい唾は初めてだった。
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