認容

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「自信があるお前を想像してごらん。どんな自分が見える?」  僕は目を閉じて考えた。思いつくまま言葉にしていく。 「ポジティブで、積極的で、絶対落ち込まなくて、声がデカくて、友達もたくさんいて、もちろん恋人もいて……」 「それって貴方なの?」  ミケが口を挟んできた。 「え?」  僕は目を開けた。真剣な顔つきでミケは続ける。 「今のままでは自信が持てないってことは、自信のある貴方は、今の貴方とは真逆なんでしょう? 仮に貴方が言うような人になれたとして、自分に自信が持てる? 『これは自分じゃない』って思って、余計に自信がなくなってしまうんじゃないの?」  ミコトは無表情でミケを見つめている。  先ほどまでと同じように、ミケの暴走を止めてくれるのを期待したが、ミコトの口は動く気配がない。裏切られた気がして、腹が立った。僕は大声を出す。 「じゃあ、昔に戻りたい! 生まれた時からやり直して、活発な子供になるんだ。一軍としてクラスを掌握し、女子にもモテて、成績優秀で第一志望の高校と大学に入って。そうしたら自信が持てる」  僕が話し終わるのを待って、ミコトが言う。 「過去には戻れないよ。最初に言っただろう? ここには『時間』という概念はない。戻ることも進むこともない」
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