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ようやく口を開いたと思ったら、僕を否定する言葉ばかり。僕は右足を少し浮かせて、勢いよく地面に下ろした。
「じゃあ僕はどうしたらいいんだよ! 僕は欲しいものを言ったのに、どうして二人して否定するんだよ! ひどいよ。お前らも僕を認めてくれないんだな!」
「否定なんかしてないじゃない。私もミコトも」
ミケがとぼけた顔でほざく。
「黙れ!」
「ミケは質問しただけ。ボクは事実を述べただけ。そこに勝手に意味づけをするのは、いつだって人間の方だ」
「意味が分からない!」
僕が怒鳴ると、ミコトが驚いたように肩を震わせる。少しだけ胸のすくような思いがした。
「とにかく、道標が見えないということは、それらは本当に欲しいものじゃないんだ。頭で考えた『欲しいもの』と、本能が『欲しい』と思うものは違うからねえ。……ミケ、案内してあげなさい。あとは一人でもやれるね?」
「任せて」
ミコトはミケの頭を軽く叩くと、下駄を鳴らしながら大通りに向かう。あっという間に人型のもやに飲み込まれ、見失ってしまった。
僕はミケに尋ねる。
「どこに行くの?」
「鏡の間よ」
ミケがそう言うと、目の前に祠が現れた。最初はミケの背丈ほどだったものがみるみる大きくなり、僕が立ったまま入れるくらいになった。
「来て」
ミケが祠に向かって歩き始める。
「なにする気なの……」
僕が聞くと、ミケはゆっくりと振り返り、不思議そうに僕を見た。
「なにもしないわ。貴方は立っているだけでいい」
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