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祠の中に入る。
大きな姿見が目の前にあった。
「貴方にはなにが見える?」
鏡の中の僕は、怯えたような顔で僕を見返していた。みるみるうちに服が剥がれ落ち、僕は裸になった。
「ひっ!」
僕は股間に両手を当てる。ジーンズのザラリとした感触。
恐る恐る下を見てみると、僕はきちんと服を着ていた。
鏡に目を向けると、裸の僕が手で股間を隠して立っている。
「大丈夫。鏡に映っているものは貴方にしか見えないわ」
ミケが背後でくすりと笑った。
鏡の中の僕の後ろから、人間の手がにゅっと二本伸びてきて、お腹の前で交差した。背中から覗いた笑顔には見覚えがあった。
彼女だ。僕が告白してフラれたあの子。
「彼女と付き合えるってこと?」
僕は嬉々として振り返ったが、ミケはゆっくりと首を横に振った。
「鏡に映るものは、あくまでも願望だから、そうなるとは限らない。貴方の努力次第よ。……それに、最後までちゃんと見た?」
「え?」
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