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僕は再び鏡に向き直った。彼女の顔がぐしゃりと歪み、次に現れたのは僕の顔だった。
「ど、どういうことだ?」
裸の僕に、僕の顔をしたもう一人の人物が腕を巻きつけている。裸の僕は恐怖の表情を浮かべ、動かない。もう一人の僕が、裸の僕の頭を撫でた。次に首すじ、そして肩……手はだんだん下に降りてくる。もう一人の僕は、こちらを見て微笑んだ。見せつけるように舌で唇を湿らせ、裸の僕に顔を近づける。唇と唇が触れ合い――。
「やめろ!」
僕は両手で顔を覆って叫んだ。
「もう嫌だ。見たくない」
その場にしゃがみ込む。
「良かった。目的地が見つかったのね!」
ミケの明るい声。
足元から光が差してくるのが、手の隙間から見えた。
――目的地? ああ、僕が本当に欲しかったものが分かったのか。一体なんだったんだ?
両足でしっかりと踏みしめていたはずの床は、音もなく崩れ、光に飲み込まれていく。
「お前に足りないものは自信ではない。自分を受け入れ、愛する勇気だよ。逃げずに向き合いなさい」
体が落ちていく感覚の中、ミコトの声が聞こえた。
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