認容

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 店の前には赤い葉っぱが落ちていて、もうそんな季節かと思う。  秋は嫌いだ。「今年もあと少し。お前はなにか成し遂げたのか」と責められているような気がして。  アパートに帰るために歩き始めると、とりとめのない考えが浮かんでくる。  内定は複数持っているけれど、もっと自分に合う企業があるかもしれないと就活を続ける同級生の青木。嫌みか。お前がいつまでも就活を続けることで、内定をもらえない僕みたいなやつが増えることに気づかないのか、自己中が!  「内定はいくつですか?」と聞いてきたので「ありません」と答えると、ぴくりと眉を動かした面接官。他でいらない人材はうちでもいらないってか。恋人がいる人の方が魅力的に見えますもんね。ふざけんな。  就活は恋愛だなんて言い始めた人は地獄に落ちろ。その言葉のせいで僕は、初めから就活に希望が持てなかった。  恋愛と言えば彼女だ。うっかり告白したとはいえ、全く勝算がなかったわけじゃない。メッセージアプリで毎日のようにやり取りを重ねてきたし、もしかしたら彼女も僕と同じ気持ちなのかもと思った日もあった。  それなのに「今は恋人とか考えられないから。ごめんなさい」だと? てめえ友達に「彼氏ほしー」って言ってたよな? 昨日の話だ。しかも僕を振る直前だ。馬鹿にするのもいい加減にしろよ。
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