認容

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 再び目を開くと、そこはブロック塀に挟まれた細道ではなかった。暗いと思ったら、先ほどまで出ていた太陽の姿がない。代わりに紺、青、黄のグラデーションの空が広がっている。  肩に誰かがぶつかってくる感覚。 「あ、ごめんなさい」  声も聞こえる。でも、僕の横を行き過ぎるのは、人型のにしか見えない。  いつの間にか僕は、たくさんのもやが行き来する太い道の真ん中に立ち尽くしていた。 「だめじゃないか、人間を連れて来ては」 「だって、とってもうるさかったんだもの」  男と女の声が聞こえて、辺りを見回すと、道から外れたところに着物を着た少年少女が立っているのが見えた。背丈からすると小学生くらいだろうか。  僕は平泳ぎする時の手の動きでもやを掻き分け、少年少女の元へたどりついた。  話しかけようと息を吸い込んだあとに気づいた。  ――こいつら、耳と尻尾が生えている。  少年の頭の上からは、ピンとした黄金色の三角の耳が生え、お尻からは太くてふさふさした尻尾が伸びている。少女の耳は、左側が黒、右側が茶色で、尻尾は細くて長い。白、黒、茶のぶち模様だ。
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