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「こんにちは」
僕の視線に気づいた少年が話しかけてきた。
見た目にそぐわないゆったりとした口調だ。
「君たちは誰?」
「誰とは難しいことを聞くね。一体なにを聞きたいんだい?」
少年が腕を組み、首を捻った。心底分からないという表情に見えた。
「名前くらいあるだろ」
「ないよ。好きに呼びな」
僕は口をつぐんだ。
名前なんて咄嗟に思いつかない。昔やっていたゲームの主人公の名前……だめだ。「あいうえお」だ。
少年がため息をついた。
「そんなに悩むなら呼び名を教えてやろう。ボクはミコトと呼ばれることが多い。そしてボクはこの子をミケと呼んでいる」
少女がぺこりと頭を下げる。
「じゃあ僕もミコト、ミケと呼ばせてもらう」
「お前が呼びたいように呼べばいい」
「『お前』とは随分偉そうだな。君たちはまだ子供だろう?」
僕が言い返すと、ミコトは「子供?」と自分を見下ろしたあと、「ああ」と言った。
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