認容

1/15
39人が本棚に入れています
本棚に追加
/15ページ
 スケジュール帳を真っ黒に塗り潰したくなる一日だった。  SNSの投稿欄に書き込まれていた一文だ。うっすら開けた目でスマートフォンをチェックした僕は、床から飛び起きた。「投稿する」は幸い押されていなかったため、長押しで全選択し、消去する。  このアカウントはサークルの仲間と交流するためのもので、当然例の彼女も見ている。くそつまらないポエムみたいなつぶやきを、全世界に発信しなかった昨夜の自分に感謝しようと思う。  昨日の出来事を端的に言えば、唯一最終面接まで進んだ企業からお祈りメールが届き、サークルの飲み会で片想いの相手にうっかり告白してふられた。  飲み会から帰ってきて、服も着替えず、歯も磨かないで床に倒れこむようにして寝た。  目を開けたら午後二時だった。遅めの昼食を取ろうと冷凍庫を開けるが、ご飯のストックが切れていた。  僕は舌打ちをして頭をがしがしと掻きむしると、室内の物干し竿にかかっているハンガーから、ネルシャツとジーンズをひっぺがした。  それらを身につけ、薄手のコートを羽織ると、ポケットに財布とスマートフォンを突っ込み、家を出た。
/15ページ

最初のコメントを投稿しよう!