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「マジかよ……。つ、強え……」
「つ、次は俺がやる!」
ボクシング東京都三位が負け、柔道部キャプテンが交代するようだ。相手は、牧田だ!学校で一、二の実力者に勝ったってこと!?確かめるために画面の前へ急いだ。アーケードコントローラーを膝の上に乗せてコントローラーの感触を確かめるように指を動かしている。その滑らかなでリズミカルな指さばきは見惚れるほどだった。
1P側に座った柔道部キャプテンは、鎖をつけたデッカイキャラクター「バーディー」を選択した。2Pの牧田は「ガイル」だ。ガイルはスト2からいるからよく知っている。
「FIGHT!」
はじまった。柔道部キャプテンは、力強くコントローラーを叩く。バーディーは、大きな体を活かしたリーチの長いパンチを繰り出す。ガイルはガードしている。バーディーが少し間合いを詰め再度パンチを繰り出す。ガイルがガードすると同時に踏みつけるような蹴りを繰り出してきた。ガイルがダメージを受ける。さらに間合いを詰める。その瞬間、ガイルが中段蹴りを繰り出し、近距離でソニックブームを放ち、下段、上段の蹴りを連続で浴びせ、また近距離でソニックブームを放つ。あっという間にバーディーの体力ゲージがなくなった。牧田の勝利だ。一瞬静寂に包まれた後「すげ」という誰かの言葉をきっかけに歓声が沸き上がった。二本目もあっという間だった。牧田の圧勝。
「強え。ほ、本物だ。さっきのもマグレじゃない。相当練習しているな」
柔道部のキャプテンは牧田に手を差し出し、力強い握手を交わした。教室は興奮と熱狂に包まれた。体の小さなが牧田が体が大きい柔道部のキャプテンに勝利した。嬉しくなって、オレが連れてきたんだぞと誇らしい気持ちになった。
その後も次々と牧田に挑んだが誰も勝つことはできなかった。いつの間にか日が暮れ、少しづつ人も減り、牧田もコントローラーを置いた。中くらいは終始笑顔だった。いや、みんな笑顔だった。オレも。
「お疲れ様。牧田くんすごいんだね」
中くらいがうっとりした表情で牧田に語り掛ける。
「楽しかったです。もうこんな時間だ。帰ります」
牧田は軽く頭を下げて帰っていった。顔は紅潮し、やりきった表情をしていた。声をかけた時と別人かと思うぐらい輝いてみえた。
「牧田くんを連れてきてくれてありがとう。えっとぉ……名前聞いてなかったね……」
「飛鳥です」
「飛鳥くん。ありがとう。明日も牧田くんと一緒に来てくれる?」
「オレ、あんまりゲームやらないんで」
「今日楽しくなかった?」
楽しかった。見てるだけで胸が躍り、興奮して、そして、感動した。小さい頃からゲームは娯楽の一つとして身近にあった。オレもみんなと遊んだり、サッカーゲームをやっていたりした。それでもこんなに感動したことはなかった。理由は分からない。
「わたしもあんまりゲームやらないんだ。だけど、ゲーム部を残したい。先輩が残してくれたゲーム部を。ゲームに救われる人もいるから」
救われる人もいる……か。なんとなく分かるような気がする。まだ友達がいないオレも、今日、少し救われた。みんなと一緒に応援していると、ここにいていいんだって心地よかったんだ。
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