シーズン1「春はあけぼの。やうやうゲームにそまりゆく」

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「じゃあ。次は俺。副部長で三年の紀本瑞樹(きもとみずき)。マッチョ紀本ってハンドルネームで、あだ名でもある。その名の通り、俺は筋肉大好きだ。格ゲーのために筋肉を鍛えている。ゴホゴホッ。おっと、すまん、ちょっと風邪気味なもんで。筋肉はあるが虚弱体質なんだ」 格ゲーのために筋肉を鍛えている?虚弱体質?ちょっと何言ってるか分からない。 「最後、僕だね。二年の国分吾郎(こくぶんごろう)。ゲーム全般よくやるけど、PCゲーの方がよくやるかな。FPSが一番得意だね。ハンドルネームはフンコロガシ」 一番ゲーム部っぽい先輩だ。ハンドルネームは一番微妙だけど……。全員の紹介が終わると、中くらいが立ち上がり、僕ら一年をテレビショッピングの商品を紹介するように大げさなジェスチャーで紹介しはじめた。 「一年生はこっちがピカイチくんでこっちが飛鳥くん」 「ピカイチくん?」 何のことか思わず口に出た。牧田も同じ気持ちだったようで、お互い顔を見合わせる。 「ピカイチくんの話は聞いてるよ。ストファイで柔道部の金剛とボクシング部の井上を倒したんだってね。あの二人強いのにすごいな。僕は一回も勝ったことないよ」 なぜかドヤ顔で、メガネを人差し指で押し上げた。メガネが光ったような気がしたが、気のせいだろう。 「あのー、ピカイチくんとは?」 もう聞かずにはいられない。 「ストファイの実力がピカイチだからピカイチくん」 笑いが、こみ上げて、だめだ、もう、大爆笑。牧田も笑ってるかと見てみたら冷たい視線を返された。こみ上げる笑いを堪えながら顔を隠す。 「で、そのピカイチくんの腕を見込んで、校内格ゲートーナメント大会をやることにした」 「校内格ゲートーナメント大会!?」 全員の声が揃った。びっくり。部長がピカイチくんという名前を普通に使ってることにもびっくり。 「今日はその打ち合わせもするために集まってもらった」 「校内ってことは、校内から参加者を募る感じ?」 フンコロガシ先輩が気だるそうに質問する。 「もう参加者は決まっている。『一年生に負けたんだってね』って煽ったらすぐに参加を決めてくれたよ」 「柔道部の金剛とかボクシング部の井上とか?」 部長はドヤ顔で、メガネを人差し指で押し上げた。メガネがきらっと光った。気のせいじゃないな。間違いなく光ったな。 「負けず嫌いな連中だからな。そりゃ乗ってくるよな」 「たくさんの人を巻き込んで、大々的な大会にして、ゲーム部をアピールして新入部員をいっぱい獲得してしまおうって作戦だ」 なんだか安易な作戦。そんなにうまくいくかなぁ。 「うちの部からはピカイチくんと紀本の二人に参加してもらう。圧倒的な勝利でゲーム部をアピールしてくれ」 マッチョ紀本先輩がマッチョポーズで答える。 「大会は中間テストからニ週間後の放課後。中間テストで赤点は取らないように。赤点だと部活出席停止だからね」 おっと。そうなのぉ。大丈夫だろうか……。
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