パンプキン・シェルター *10月*

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「ごめんなさいね、ジャック・オ・ランタンさん。こんなおイモじゃ、若い人は喜ばないわね」 「いいえ、いただきます」 「あら、しゃべった」  ジャガイモが貴重なものにも関わらず、に振る舞ってくれる。僕がカボチャを被ったままでいると、「外さないの?」と指差してくるので、かぶりを振る。ふふふ、と笑う彼女の声が、くりぬいた部分の空洞に響く。  玄関口じゃなんだから、と丁寧に室内に誘してくれたが、僕は辞した。 「こんな田舎で回っても、大してお菓子を貰えもしないでしょうに。都会に行けば、若い人もたくさんいるでしょう。それこそ、大陸に渡ったらもっと違うんでしょうけど。  ……あなたのご家族は、移住されなかったのね」 「いえ。僕の家も、一家揃って」 「あら、そうだったのね。じゃあ、Éire(アイルランド)(こちら)に最近戻ってらしたの?」  僕が黙っていると、構わずにジーンは地平線の先へ視線を移し、呟いた。 「私の幼馴染も、America(アメリカ)に渡ってしまったわ」  彼女の視線の先にある場所を、僕は知っている。  海の向こうの都会からここまで、ついさっき、移動してきたばかりだ。
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