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からりと窓を開けた瞬間、モモは外へ飛び出した。
洗濯物でいっぱいの両手では止められず、あっと声を出す前に、その姿はひらりと塀を越えていた。
「モモッ!」
干すはずだった洗濯物を放り出し、
足下のサンダルをつっかける。
つんのめるくらい急いで門まで回ったのに、
見渡した通りにモモはもう影もなかった。
「モモー、モモォー」
名前を呼びながら歩きだす。
お隣さんの車の下。
お向かいさんの室外機の上。
猫が行きそうな所を近くから順番に見たけれど、
モモはいない。
あんなに身軽に、ひらりと飛び越えてしまったのだから、そのまま羽のように遠くへ駆けていったのかもしれない。
困った子。
ううん、私がいけない。
外に出ちゃだめよって、
ちゃんとしつけなかったから。
洗濯物を干す度に外を覗く仕草が、
あんまり可愛かったのだ。
まるい瞳を一心に向けて、あの柔らかな猫の手をちょいちょいと窓の外へ伸ばす。
私がこらっと声をあげると、
素早く部屋に引き返して、
何にもしていませんよってそっぽを向く。
その顔が見たくて、モモがそばにいる時にわざと洗濯物を干す日すらあった。
でもそれもおしまいだ。
連れ帰ったら今度こそきっちり窓を閉めて、
外に出てはいけませんと言い聞かせなくては。
モモ、あなたの居場所は家の中ですよ。
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