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『それならば、もてるようにしてほしいとか、別に願うべきことがあるのではないか』
モモンガはその小さな首を傾げた。
「あなたはかみさまではないのですか? かみさまでないとかみははやせないですよね」
うん?
まあ、暇な神でもなければわざわざモモンガの頭に毛をはやそうとはしないだろうよ。
モモンガはまた頭頂をぺちぺち叩きながら、はあー、と白いため息をついた。
なんだか小馬鹿にされているような、奇妙な気分になった。
『神といえば、神である』
「それなら、かみのけをはやしてもらえないでしょうか」
ごそごそと頬袋から小さななにかの実を出す。
モモンガは今度はひげをひっぱりながら、上を向いたりきょろきょろと見回しながら呟く。
「おれいです。とてもおいしいです」
なにかものすごく得意そうな表情だが、べとついた実を持つ手はぷるぷるしていて、またきょろきょろと辺りを回し、スンスンと実のにおいを嗅いで、残念そうに顔から離す。
ずいぶん未練がありそうだ。
正直、いらぬ。
だがわしのところに願掛けをするものなど久しいな。たわむれに、目の前のモモンガの遺伝子情報を少し改変する。
『実はいらぬが、そなたの願いは叶えよう。3日もすれば毛は生えてくるはずだ』
「ほんとうですか、ありがとうございます」
礼を言う前に実は口の中に収められたものだから、その礼はもごもごと曇って聞こえた。
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