ももんがの毛【2000文字短編】

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「あっでも、かみさまのはなしをきいたときに、おれいをするようにききました。どうしましょう」 礼と言われてもな。その小さな手にできるものも思い浮かばぬ。 『そもそもわしには欲しいものなどないし、そなたにできることもないだろう?』 なぜか、その言葉は俄然モモンガのやる気に火をつけたようだ。 小さな目にメラメラと闘志が燃え上がった。 「そこまでいわれると、ももんがのこけんにかかわります」 おお、難しい言葉を知っておるものだな。 妙に感心した。しかし、そもそもわしに欲しいものなどない。 『物を積めば願いが叶うと思われるのも不本意だ。不要なものを持ち込まれても迷惑である。用が済んだなら去るがよい』 「そうですか、たしかにかみさまですものね」 モモンガはそう言いながら、ひどく残念そうにとぼとぼと立ち去った。 その背にはなにやら哀愁すら漂っている。 願いはかなえたのに、解せぬ。
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