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あれから村は廃村へと近づいていった。不作が続き、逃げだす者もあとをたたず、儀平も出ていった。
その一年の間、助三郎はあの日起こったことを思い起こし、あのまま上手く活用してやるすべはなかったものだったのかと、考えを巡らせた。
その考えの結果、助三郎は今日この戦場にいるわけなのだが――、小神は現れず、戦場ではすでに戦の火蓋が切られた。
「おい、助三郎。まだか」
武将がそわそわ歩き回り、助三郎に詰め寄った。
「へ、えぇ。もうすぐ、もうすぐ力が湧いてきましょう。したらば、全ての敵を薙ぎ倒してみせます。暫し、お待ちを。どうか」
地面に擦りつけ続ける助三郎の額によって、そこだけ円く凹んでいる。
この問答がもう四、五回は続けられていた。
「殿、もう待てません。今すぐ出陣のご判断を」
家臣の言葉に、武将は意を決した。
武将の号令で家臣が一斉に戦場へなだれこみだす。
(ここで逃げなければ命はない)
助三郎は兵に混じって走り出した。
森の中に入りこんだ助三郎は、あっという間に忍者衆に囲まれた。武将が忍者衆に助三郎の処罰を命じたのだ。
「おい! 早く来てくれ!」
助三郎がそう叫ぶと、忍者達はそれをせせら笑った。が、次の瞬間には、皆一様に助三郎の背後を凝視した。
助三郎が胸を躍らせて振り向くと、期待通りの小神がいた。
「遅くなってすみません。ちょっと色んな師匠に弟子入りしてまして……」
「話は後でいいから、助けてくれ」
話しかけてきた小神に、助三郎はお願いした。
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