パン屋さんの気持ち

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「あのせんせー そこそこいけてるけど、彼女いなそうだよね」バイトの安達 きいちゃんが、話しに入ってくる。 「そうかなぁ」 「まぁ 勘だけどね」屈託なく笑うきいちゃんに、気持ちを弄ばれた感が否めない。 「あら あからさまに残念そうな顔になったわね」柳さんがふふふと笑う。 「でも 私も思ったわよ。あの先生、彼女いなそうだなぁって」 「柳さんも“勘”ですか?」 「あら 私は経験値がみんなより高いからね」当たるわよぉ、と私たちを見渡す。怪しげな占い師みたいだ。 「でも半年くらい通ってくれてるけど、彼女を匂わせることないよね」店長も外を見ながら、思い返す素振りをみせる。みんなして、私を期待させる。 「まぁ彼女がいないとしても、名前すら知らない私がどうこうって話ではないんですけど」と思いながら苦笑いをする。 「可能性ゼロじゃないじゃん」きいちゃんは、じれったそうにしている。 「牛歩戦略だね。ゆっくりって感じかな?」店長はやさしく笑う。 「牛でもカタツムリでも、前進してたらいいんじゃない?」柳さんの言葉に曖昧に笑って返す。前進かぁ。もっと進めるきっかけ誰かちょうだぁーい。 心のなかで叫んでみる。
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