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ピロン♪
ご飯を食べ終わって会計しようとしたとき、きいちゃんのスマホがなる。
「ちょうどよかった。もう彼が来たみたい」
お店を出たら、きいちゃんの彼氏がいた。挨拶をして、きいちゃんは彼氏と帰って行った。彼氏はきいちゃんの荷物を当たり前のように持って、あいてる方の手を繋いでいた。きいちゃんは、彼氏の前でも私たちといるときとかわらない、明るくて楽しい子なんだろうけど、きっと彼氏にしかみせない“女の子”の顔も見せているんだろうなぁ。2人の後ろ姿を見ながら、そんな下世話なことを考えてしまった。
「羨ましい?」店長に聞かれて、はっ!と我にかえる。
「よだれでてるよ」と店長がわらう。え?と口元にてをあてると
「冗談」と店長がまた笑う。
「もう やめてください!」
「いつも騙される、さなちゃんが悪い」まぁ確かに。ああいう言い方するときの店長は、だいたい私をからかっているときだ。
「まぁ 実際羨ましいですけどね」
「1人でいる方が楽?」
「うーん。誰かと過ごすっていうほどよい緊張感も嫌いじゃないかなぁ」
店長に促されて、駅に向かって歩き始める。さりげなく、駅まで送ってくれる店長は、ほんとは優しい人だ。
「まぁ 緊張感なしに自然でいられるのがいいんでしょうけど」自嘲する。
「店長こそ、そろそろ寂しくなって来たんじゃないんですか?」イタズラっぽく冗談めかして言う。店長はバツイチだ。
「おれはさ」前を見たまま視線を空に向ける店長。私も思わず空を見上げる。 星がちらほら見えた。
「お店のみんながいたら寂しくないかなぁ」
ニコッと笑って私の肩を軽くたたく。
駅に着いた。
「お疲れ様。また明日よろしくね」
店長は私に手を振る。
「お疲れ様でした ありがとうございます」
私は軽く頭を下げて改札に向かった。
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