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その彼氏が1度だけ店にきた。
そして嬉しそうな彼女に一言
『お前まじで、仕事と俺しかないのな?』と嘲笑った。
彼女は、泣きも怒りもしなかった。ただ黙々と仕事をこなしていた。
彼女は頑張ったけど、その彼氏とはすぐに終わってしまった。
別れたその日、1日休んだ後、何もなかったようにさなちゃんは働きだした。
今考えたら、あの時が俺にとっての『チャンス』だったのかも知れない。
それから1年半がたち、俺の都合が悪くて、さなちゃんに中学校のパンの配達に行ってもらった。後悔しかないけど、その時“先生”と出会わせてしまった。 まさかさなちゃんが恋をするなんて…
予想してなかった。俺のそばで大事に大事にしてたから…。
その先生は俺のパン屋にきはじめた。偶然か?でも俺はわかってしまう。あの人もさなちゃんに会いに来ているんだと…。
そして、先生の来店を待つさなちゃんをみて、俺は“いいお兄さん”という立場をとっさに選んでしまった。たぶん本人はおろか、あの柳さんですら気付かないほどの、一世一代の大芝居だ。だってこの店から、さなちゃんがいなくなることのほうがつらい気がしたから…。それに、こんなにも早く2人の関係が近づくとは思ってなかったから。
だから今日はさなちゃんをまっすぐ帰したくなくて、
きいちゃんと一緒にめしに誘った。
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