店長の思惑

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きいちゃんが彼氏に連絡するのを、さなちゃんは目を細めて見守っている。多少年齢や環境は違うものの、2人とも若い女の子だ。やっぱりさなちゃんも、きいちゃんを羨ましく思うのだろうか?“美人”と言う観点で見たら、きいちゃんの方が美人だし、おしゃれだ。さなちゃんの方が女子力としては低い感じはする。だからどっちが“お姉さん”なのかわからない(笑)。ただそれすらも愛おしい。きいちゃんはあまり聞きたくない話題をふってくる。曖昧に返事をしながら、2人の会話を聞いてしまう。 食事を済ませ、きいちゃんは彼氏と2人で帰って行く。それをやっぱり目を細めて見送るさなちゃん。 「羨ましい?」いつもみたいに 「よだれでてるよ」とからかう。そんなウソにも、毎回ちゃんと引っ掛かってくれる。俺とさなちゃんだけの大切な時間。当たり前のように駅まで送らせてくれるさなちゃん。 「羨ましいですよ」 「1人でいる方が楽?」 「でも、誰かと過ごすほどよい緊張感も嫌いじゃないです」まぁ自然でいられるのがいいんでしょうけど、と笑うさなちゃん。  ねぇ俺とはどうなの?自然じゃない?一緒にいても苦痛じゃない? そんなことを考えていると、さなちゃんから 「店長こそ、そろそろ寂しくなって来たんじゃないんですか?」イタズラっぽく聞かれて、思わず仮面が剥がれそうになる。  「おれはさ」ぐっとこらえて空を見る。 「お店のみんながいたら寂しくないかなぁ」そう、さなちゃんがそばにいてくれたら‥。 そこでちょうど駅に着いて、さなちゃんと向かい合うと、その後ろのひとつ先の街灯の下に、先生(あのひと)の姿がみえた。—っ! 一瞬でいろいろ考える。まずはさなちゃんに、彼の存在に気づいてほしくない。それにあの人は気づいている?動きを止めたその人に、こちらに気づいていることを悟る。慌ててさなちゃんの肩を軽くたたき、 「お疲れ様」と手を振って、駅へと促した。そのうえ努めて親しげに、彼の目にそう映るように…。 さなちゃんの幸せを壊したくないのに、いいお兄さんでいようって思うのに、汚いどろどろした気持ちに押し流されてしまう。 何も知らないさなちゃんは、いつものように会釈して改札に消えていく。俺も彼に気付かないふりをして背中を向けた。 ごめんさなちゃん。ちょっとだけ…いや、本当に意地悪で—ごめん—
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