先生の悩み

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先生の悩み

今日はパン屋に行けなかった。佐倉さんと顔を合わせるのが照れくさい…ってうぶかよ!自分に突っ込みを入れつつ、駅の近くのコンビニによって、家路につく。いや、本音は佐倉さんに会えるかもと言う淡い期待ありきだ。 駅のすぐそばまで来ると、期待が現実になる。後ろ姿と。昨日と同じバッグで佐倉さんだとわかる。恋の力かなぁとかくだらない思考に溶けていると、すぐに隣を歩く男に気づく。 声が聞こえる距離ではないけど、街頭に照らされる佐倉さんの横顔は笑顔だ。 二人は駅の前でとまると、一緒にいる男は、佐倉さんに微笑んで、佐倉さんの肩をポンポンして手をふる。佐倉さんも嫌がる様子もなく、軽く頭を下げて改札へ向かう。思わず立ち止まって見つめてしまった。一瞬相手の男がこちらを見たような気がしたが、すぐに歩き出したので、気のせいだと思った。 彼が去ってもまだ立ち尽くしていた。踏切の音でやっと歩き出す。 彼氏かなぁ。最悪だ。うかれまっくってた自分に情けなくなる。でもなんとなく、佐倉さんは他人行儀な感じだったけど…。わずかな可能性を探し出そうと、必死になっている自分に、少し笑ってしまう。『好きなら早く告れよ』って…。 家の鍵を開けて、電気をつけてまだ、ぼーっとしてしまう。今ならまだ傷は浅い。でも、半年かけてやっと進展できた彼女への想いは、思ったよりも俺の心に染み込んでいた。あきらめるにはあまりに深く、彼女を思っている自分に、そんなに好きなら何でもっと積極的になれなかったのか、と問いただし責めてしまう。せめて思いだけでも伝えるか?それとも潔く身を引くか?俺ってこんなにうじうじした性格だったんだな、と思い知らされる。
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