店長の反省

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店長の反省

あの日から先生(あのひと)は、お店に来なくなった。さなちゃんはいろいろ考えているようだけど、仕事はきちんとこなしてくれている。いや、仕事に逃げているのかも…。 嫉妬心からあの人に見せつけるようなまねをしてしまった。あの人がそんなにさなちゃんにはまっていると思わなかった。いや、俺のせいじゃなくて、たまたま来ないだけというだけかもしれない。けど、けど俺だって…。大人げないけど、俺だってさなちゃんを大事におもっている。でも、明らかに落ちているさなちゃんの気持ちが、好きだからこそわかってしまって、俺も辛くなってしまう。 それでも大人げなく『それで終わってしまうなら、あの人とはそれまでの縁だったんだ』と、自分にも言い聞かせるように、さなちゃんをなぐさめる。 あの人だって、ほんとにさなちゃんとつきあいたいなら、正面きって確かめに来たらいい。でも、それをしないで、自分の気持ちをさなちゃんに伝えることなく引き下がるというなら。それまでということだ。とか、もはや自分を正当化する言い訳しか出てこない自分に、情けなくなってしまう。俺だって人のことはいえない。自分の思いもしまい込んでただただ見守ってるだけだし…。優しすぎる…いや、意気地がないだけだ。だから、あまりさなちゃんを見ても、あの日のことを正直に言えない。嫌われたくないから。俺のほうがずるくてヘタレだ…。 もしさなちゃんが立ち直れなかったら、また“いいお兄さん”としてみんなで食事にでも連れ出すくらいしか、俺にはできない。きっとチャンスなのかもしれない。でもそれをいかせない俺は、先生以下だ。
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