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優柔不断
パン屋さんに行けないでいる。どんな顔して行けばいいのか。いや客と店員の関係なんだから、普通にパン買ってかえればいいんだけど…。そんなこと考えながら、給食のパンを眺めてしまう。
今日は職員室で給食を食べている。
「パンになんか入ってます?」佐藤先生に声をかけられてわれにかえる。
「いや 相変わらずうまいなぁ と思って」
適当なことを言ってごまかす。うまいのは本当だ。
「確かに、店長の雰囲気がそのままパンに出てるってかんじですよね」と佐藤先生は納得したように頷く。
「へぇ。ぼく店長よく知らないんでわからないですけど、優しい人なんでしょうね」ほわっと優しい口当たりと味だしね。
「うん まぁ先代は 『息子は優しすぎる』ってよく言ってましたけどね」
「へぇ」
「THEパン屋さんって感じのまぁなかなかのイケメンですよ」生徒でも噂してる子が何人かいたし、と言って佐藤先生は牛乳を飲み干した。
「優しいパン屋さんなんて、中学生に人気ありそうですもんね」もてるんだろうなぁ。
「まぁ、あそこは女の店員さんも、THEパン屋さんて感じだし、パンも美味しいから人気店ですよね。給食で食べられるなんてありがたい」と佐藤先生は爽やかに笑った。“女の店員さん”って言われて、すぐに佐倉さんの顔が浮かんだ。 切なくなるのをぐっとこらえて、俺も微笑んで返した。
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