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「なになに?どこ行ってないって?」むかいの席の葉山 奈津美先生が話に入ってくる。少し年上で姉御肌の葉山先生は、女子には人気だが、中学男子には倦厭されがちだ。この人の良さを受け入れるのは、十代男子には難しいかもしれない。が 俺たちのような教師には、大変頼りになる先輩だ。
「パン屋ですよ。加宮ベーカリー」と佐藤先生が言う。
「あぁ 給食のパン屋。名前聞いたらおなかすいたかも」と葉山先生も同じことを言う。
「あのパン屋さんさ、前はレジとか接客を、優しそうだけどちょっと頼りないお兄さんがやってたじゃない?」葉山先生の問いかけに佐藤先生が
「新しい店長ですね」と答える。
「でも、ここ1年くらいさ、若い女の子が任されてて、愛想いいし評判いいらしいよ」佐倉さんのことだろう。
「奥さん?にしては若すぎかなぁ」葉山先生の言葉に、ちょっと胸がざわつく。
「兄妹って感じじゃないし…。いや身内だとしたら似て無さすぎか」と葉山先生と佐藤先生は笑っている。
「ま、たぶん社員さんかな」そうであってくれ。と切に願う。
ありえなくはない。あやふやで思い出せない店長さんの顔を必死で思い出そうとしてしまう。
「さぁてと、授業行こうか」葉山先生の一言で、現実に戻される。
「はい」何とか気持ちを切り替えて、生徒の待つ教室へ向かう。
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