先生と店長

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何でそんなこと‥‥!さなちゃんと言うのがおそらく佐倉さんのことだと、瞬時にわかる。あの日、佐倉さんと店長を見かけた日、やっぱり俺が見てたの気づいてた?ていうか、俺の気持ちに気づいてる?だとしたら、その発言はどんな意味があるの?はてなばかりで言葉が出てこない俺に構わず彼は、 「じゃ」と言って歩き去る。 『あの』と ようやく声を掛けようとしたところで、俺のスマホがなる。学校の番号だ。 「もしもし」 「あぁ 相川先生?こんな時間にごめんなさい」葉山先生だ。 どうやらお子さんが怪我したらしく。たいしたことないが、朝一で一応医者にいくから、明日の朝の校門での生徒指導を代わって欲しいとのことだった。俺は了解をして、電話を切った。あたりまえだか、店長の姿はもうどこにもなかった。                 店長side 今日はパンの売れ行きが異常によかった。タウン誌に載ったと言うのもあるだろう。売るものがなくなったので、スタッフも早めに帰して閉店して、俺も店を出た。すると、店の前で立っている人影が見えた。あっ 先生だ。少し目を凝らして、すぐにわかった。 「ごめんなさい。今日もう売り物なくなっちゃって、早く閉店しちゃって」と声をかける。 俺が誰なのか考えているようだ。パンを買いにきたのか?それとも‥。まぁさなちゃんに会いに来たんだろうな。それか俺との関係を確かめにきたかな?すぐに、俺がだれなのかわかったようだけど、何か言いたげで何もいってこない。真意はともかく『パンを買いに来た』という彼に少し意地悪したくなる。 「今日はね、パートもバイトも職人さんももみんな早く帰しちゃったんです。また、パン買いに来てくださいね」と言った。"さなちゃん”でわかるかなぁ?ダメだな俺…。さなちゃんの幸せを応援したいはずなのに、気持ちは自分の欲望に忠実になってしまう。彼に意地悪したら、さなちゃんが泣いてしまうかもしれないのに、でも、それは俺にはチャンスかも、とかずるいことを考える。まぁあとは先生次第…かな。ジレンマに耐えきれなくて 先生に別れを告げた。タイミングよく、俺を呼び止めようとした彼のスマホが鳴る。彼の通話中に、足早にその場を去った。さなちゃん…このくらいの意地悪はゆるしてね。 
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