21人が本棚に入れています
本棚に追加
/40ページ
パン屋さんの溢れる思い
やっぱり先生の顔をみたら“好き”が戻ってくる。柳さんに心配されてしまうほどに考えこんでしまっていた。
「恋煩いね。あの先生も罪な男ねぇ。こんなにかわいい子を弄ぶなんて」と柳さんは自分のことのように、深くため息をはいた。
「大丈夫ですよ柳さん。仕事中なのに…。ごめんなさい集中しますね」と笑顔を見せるけど、うまく笑えてるかなぁ。いけないいけない、ほんと仕事に集中しなきゃ。
なんとか仕事をこなし、閉店して帰路につく。なんとなくひとりになりたくなくて、幼馴染みの葉瑠にメッセージを送る。
『久しぶり』
『久しぶり どうした』すぐに返信が来る。
『うーん なんとなく(笑)』
『ふーん。今、さなの職場の近くの居酒屋で、瞬太と飲んでるけど、来る?』瞬太も幼馴染みだ。
『行く』
場所を確認して急いで向かう。
「久しぶり」2人は入り口近くのテーブル席で、私を迎えてくれた。
「相変わらずパン屋のいい匂いするなぁ」瞬太は匂いフェチだ。
「相変わらず変態発揮だなぁ」イケメンじゃなかったら被害届けだされるよ、という、葉瑠と瞬太のといつもの会話に安心する。
「珍しいね。さなが突然連絡してくるなんて」幼馴染みゆえに、なんとなく“いつもと違う”のは気づかれてしまう。グレープフルーツジュースと焼おにぎり茶漬けを頼む。
「いきなり〆か」と突っ込まれても空腹にはかてない。
「もしかして、好きな人でもできた?」
瞬太はなんでずかずか聞いてくる。
平日で手すきなのか、飲み物がすぐくる。一口飲んで2人を見る。
「今日2人が近くに来てくれててありがたい」と言った。
「俺の話は無視か?」そんな瞬太をさらに無視して、葉瑠が、私に答える。
「たまたま仕事がこっちであってさ、瞬太を呼んでご飯食べにきた」
瞬太はフリーでイラストレーターしてるから、締め切りに追われてなければ わりと自由だ。わざわざ電車で30分位かけてきたんだね?健気だなぁ瞬太。これでまだ葉瑠と付き合えてないのが、かわいそうなくらいだ。でも、葉瑠も絶対彼氏作らないし、もう大丈夫だと思うんだけどな。でも2人は、『もし付き合ってもし別れたら、幼馴染みに戻れなくなるのが怖い』という理由で恋人ではない。ただ私が思うに、もうそういう行為もあるだろうし、その時点で幼馴染みとしてどうなのか?と思ってしまう。けどそれは2人の問題だ。
ともあれ、健気な瞬太のおかげで私は2人に甘えられて、今日はラッキーだ。
最初のコメントを投稿しよう!