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ぎゅっ‥‥
気づいたら抱きしめていた。佐倉さんからはパンのほのかに甘い匂いがした。
「え?」俺の腕のなかで小さな声が聞こえる。我にかえるけど、顔を見られたくないし、どうしたらいいのかわからなくて、もう前に進むしかない。
「佐倉さん。好き…です」ピクッと佐倉さんの肩が跳ねるのがわかった 。「もし、佐倉さんに好きな人がいないなら、俺を好きになってくれませんか?」
恥ずかしすぎて、抱きしめたまま返事を待つ。
「あの、私—もう…先生のこと、好きです」俺の胸をそっと押して、少し距離を作り見上げてくるs安倉さん。
ヤバい…。最高にかわいい。
「私も、先生のこと好き—です」しっかり目を見て言ったあと、恥ずかしいのかうつむく。
好きだって、俺のこと好きだってぇぇぇ!と叫びたい 。
「そしたら、付き合ってもらえますか?」自分の気持ちを落ち着けるように、佐倉さんの肩に手をおいて、視線を合わせ聞いてみる。
「はい」顔を真っ赤にして答えてくれる。さっきまで泣いてたのに…。よかった、佐倉さんの笑顔が見れて。
俺はたまらずもう一度佐倉さんを抱きしめた。
「あ あの佐倉さなっていいます」
あぁそういえば
「俺 相川むらです」名前教えてなかったなぁ。
「あいかわ むら‥」佐倉さんは俺の名前をリピートする。幸せそうに確かめながら口にするその名前は、何年も付き合ってきた自分の名前なのに、特別な感じがした。
「そう むら」
「むら くん」照られながらそう呼ぶ彼女に俺も答える。
「さなちゃん」
こうして、俺の朝食にパンが戻ってきた。
「むら君 パン焼けたよ」
今日も大好きなパンの匂いに包まれて、幸せとパンを噛み締める。
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