パン屋さんの気持ち

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「気持ち悪いねぇ その笑顔」店長に言われて、妄想から引き戻される。 「あっすいません!」 「よだれ出てるよ」 「えっ?」あわててペーパーティッシュで拭き取ろうとする。 「うそだよ」店長はおかしそうに閉店準備を始める。 「もう!からかわないでください」怒ったふりをする。 「お腹すいちゃった?」またからかう。店長も夜のスタッフも、たいてい私の淡い恋心に気付いてる。『さなちゃんわかりやすい』のだそうだ。自覚がないわけでもない。 「初めて長く話したんです」今も嬉しさを隠せない。 「え?そうなの?」店長は意外そうに私を見た。 「さなちゃん、ほかのお客さんとは、わりときさ気さくに話してるし、ほら 積極的って言うか」そうなんですけど‥‥。 「かわいいじゃなぁい」と奥からパートの柳さんが顔を出す。 「好きな人にはなかなか話しかけられないのよね?」と私の気持ちを代弁してくれた。 「そういうもんなんだ。僕なんかすぐアプローチしちゃう」 そりゃ店長は人懐っこいし、人柄なのかかまってあげたくなるし、すごくかっこいいわけじゃないけどもてる。だから、がんがん行けちゃうのかもしれない。 私はびびりだから、先生に彼女いたらどうしよう、とか、私が声かけたら迷惑だろうか?と考えてしまう。その場合私も傷つくし。
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