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先生の事情
「いらっしゃいませ」
夕方、閉店間近のパン屋に週三で寄る
俺は、相川 邑
中学校の先生だ
毎週木曜に、学校に直接パンの配達に来てくれる町のパン屋さん。その配達で来た女の子に、一目惚れをした。
一目惚れなんて現実にはないと思っていたから、自分でもおどろいている。
それから、彼女の笑顔に引き寄せられるように、パン屋に通っている。
別にパンがすごく好きなわけじゃない。
彼女が学校に配達に来たのは、偶然だったのか、学校で彼女に会うことはそれ以来なかった。
「いつもありがとうございます。パンお好きなんですね」
すっかり常連となって、彼女にそう言われた時は、少しパニくってしまって
「いや、給食で食べたときおいしくって…」としなくてもいい言い訳をしてしまった。
こんな恋愛に奥手の俺が、半年でわかったのは『佐倉さん』という彼女のネームプレートの情報だけだった。
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