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ああ、それなのに。
「貴方には失望しました、アインハルト査問官」
何故、今。自分は寝台にくくりつけられているのだろう。
「まさか、長年神に支えてきた貴方が……本物の“悪魔”であっただなんて」
共に異端審問を行ってきた仲間達が、冷たい目で自分を見下ろしている。そのうちの一人は大きな水瓶を抱えていた。何に使われるものかなんてことは、私が一番よくわかっている。今からあれを、私の胃が破裂するまで飲ませようというのだ。
「悪魔の落とし物なんて噂、我々は完全に信じていたわけではなかったのですよ。証明を欲しがった民衆の誰かがそれらしいお守りを作り、広めただけのデタラメかもしれないと。でも。……それが悪魔の心を持つ者を示す指針になるというのは、本当だったようです」
「ち、違う!待ってくれ、私は」
「腐った枝は断たれるべきと、我らが主も仰せでしょう?」
ああ、自分は何を間違えたというのだろう。
あの時、部屋を覗いている仲間に気づかなかったのが間違いであったのか。
あるいは、それよりも前に大きな失敗があったのか。
「少なくとも、苦楽を共にした仲間に魔女の罪を着せるような人間は……主にも、査問官にも、相応しくはありません」
冷たい目で男達に突きつけられる、死刑宣告を。私はがくがくと震えながら聞き続けるしかなかったのである。
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