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──お願い、歳神様。私を、十六年前の、六歳の私に戻して! 赤色のランドセルを選んだあの日まで。運命を変えたいの! 私の十六年分の寿命をあげるから……!
彼女がその選択をしたのは今回が初めてではなかった。
前回は茶色。その前は桃色のランドセルを選んだのだったか。
どういうわけか彼女は二十二の年の大晦日になると十六年前に戻せと言う。……寿命とともに十六年分の記憶も受け取っているためだが。
確かに選ぶランドセルの色は変わったが、それでも彼女は何度も人生をやり直したいと願う。
彼女は知っているのだろうか。本当だったら今頃何歳なのか、今回のやり直しで何歳まで生きられるのかを。
彼女は気付いているのだろうか。今回のやり直しが何回目なのか、次のやり直しが存在しないことを。
ああ、次は橙色を選んだのか。
沢山の色鮮やかな花々を背景に白い台の上、笑う幼子の写真。その横に並べられた真新しいランドセル。
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