殺し屋は果たして操り人形だろうか?

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 何故、この男と伴に行動しなければならないのか。  この疑問を前川哲(まえかわてつ)は何度も頭の中で繰り返していた。  この男とは、自分の前をすたすた歩いていく人物だ。顔が童顔で、どこぞのアイドルグループにいてもおかしくない整った目鼻立ちをしている。格好も今時の若者だ。ただ、この男はそこらの若者とは違う。  相沢健一(あいざわけんいち)。今はそう名乗っている。だが、本名は不明。生年月日を知らないので正確な年齢は判らない。見た目は十八くらいだが、口を利けば若者らしさはあまり感じない。  そして職業だ。なんと、普通なら疑ってかかるプロの殺し屋だ。だが、前川はこれが事実であることを知っている。実際に犯行現場も目撃している。  しかし、何の因果か刑事である前川はこの男とコンビを組まされている。名目上ではあるが、犯罪者と組まなければならないなんて、刑事として納得できない。今年厄年の中年には、何が何でも理解したくない状況だ。  前川は肩幅のがっちりした筋肉質の男である。しかし、顔立ちがそれほど老けていないせいで若く見えるのが悩みだ。未だに若造扱いされるのが腹立たしい。もう四十を越えたというのに、なぜ三十代の若者扱いされなきゃならないんだ。童顔に生んだ親を恨みそうになる。 「あれ」
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