17時のあなたに伝えたい

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17時のあなたに伝えたい

 高校二年生の夏。親の了承をもらい、俺は人生ではじめてのバイトをすることにした。受験生となる三年生までには辞める約束ではあるが、大学生活を送るための蓄えにまわすつもりだ。もちろん大学に行ったら、そこでもバイトをはじめる気だが、そのための社会勉強でもある。 「面接受かったー!」  学校でクラスメイトでもあり、幼馴染みの紗椰に自慢げに昼休みにコンビニバイトに採用されたことを打ち明けると紗椰はパックのコーヒー牛乳をストローで啜りながら俺の顔をじろりと睨む。 「大輔、いつもフワフワしているのに勤まるの?いつも、やる気なさそうなのにな」 「うっせーな」  紗椰の言う通り、俺は何かにのめり込んだことは人生で一度たりともない。だが、それは俺の要領がよいためだと自負している。コンビニバイトなんか、何となくこなせば何とかなるはずだ。 「まぁ頑張ってみなよ。駄目だと思ったなら私の胸の中で泣かせてあげるからさ」 「何言ってんだよ?」  ケラケラと笑う俺に紗椰もケラケラと笑う。小さな頃から俺と紗椰はこんな関係だ。
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