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「スゴい綺麗な人なんだよ!」
翌日の昼休み。パックのオレンジジュースをストローで啜る紗椰に三沢さんの話をすると紗椰は再び俺を睨んでくる。
「男子は綺麗な人、好きだもんねー!」
「女子だってイケメンが好きだろう?」
「みんながみんな、そうだと思うなよ?」
紗椰はジトッとした目で俺を睨む。
「何だよ。焼き餅かよー?」
紗椰はその言葉には反応しない。
「今日も17時からでしょ?私、見に行くね。その三沢さんって方がどんだけ綺麗な人なのかをね」
「びっくりするぞ!」
その放課後。俺と紗椰は一緒にバイト先に向かい、店の扉をくぐる。
「お疲れ様でーす!」
俺は元気よくレジにいた三沢さんと店長に声をかける。三沢さんはすぐに俺に気付き、その横の紗椰にも気付く。
「お疲れ様。隣の方は彼女さん?」
三沢はクスクスと笑いながら声をかけてくれる。
「違います!三沢さん、からかわないで!」
紗椰は三沢さんの顔をジッと見つめる。
「本当に綺麗な人だ……」
「だろ?」
得意気な俺に三沢さんは、またクスクスと笑う。
「木下くんの隣の彼女さんもかなり可愛いのにね。灯台下暗しかぁ」
紗椰の顔がパッと明るくなる。
「もう!可愛いって言われちゃったー!」
喜ぶ紗椰を俺は冷めた視線で眺める。
「大輔、何か文句ある?」
「別に」
三沢さんは、笑いながら衝撃発言を次にかました。
「私は子持ちだし、そんな時期が懐かしいわねぇ」
俺も紗椰もポカンと口を開けて驚いてしまった。
「三沢さん、ご結婚されているのですか?」
「あはは。結婚して子供産んで離婚したの。私が仕事しているときは母が子供を見てくれているからね」
「失礼ですが、三沢さんって、おいくつですか?かなり若く見えるのですが?」
紗椰は恐る恐る俺が絶対聞けないであろうことを口にする。
「24歳だよ。まぁ高校卒業してすぐに結婚したからね」
「苦労なさっているんですね……」
俺は寂しげに呟いた。
「そんなことはないよ。子供は可愛いし、毎日そこそこ楽しいよ。さ、木下くんは早く着替えてきてね。今日もお仕事だよ」
「じゃあ私は帰るね」
紗椰はそのまま帰るかと思ったが、飲料を買うついでに俺の知らないところで三沢さんとおしゃべりをしていたようだ。俺がユニフォームに着替えて、店に出たときはすでにいなかったが。
「可愛い子だね。大事にしなよ」
いきなり、三沢さんにそう言われたものだから俺は面食らった。
「ただの幼馴染みだよ」
「それでもよ」
三沢さんの言葉には愛がある。きっと、お子さんもいい子なのだろうな。
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