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期末試験が終えたならば、俺はコンビニバイトを辞める予定だ。それまでにはバイトも勉強も全力を尽くして、少しでも三沢さんの評価を上げるしかない。
その姿を一番近くで見ている紗椰はある日の昼休み、俺の顔をマジマジと見ながら呟く。
「大輔、変わったなぁ。去年の今頃はやる気ない顔をしてたのになぁ。要領よくサボります〜みたいな感じだったのに」
「悪いかよ?」
「今の大輔は悪かないよ。なんかの心境の変化かい?」
「……変わったんなら三沢さんのおかげかな?ああ!もうすぐ会えなくなるんだぞ!」
紗椰はパックのパインジュースをストローで啜ってから、俺の顔をマジマジと見つめる。何度こんな目で見られたか。
「後悔するくらいなら、ちゃんと告れ。私が見届けてやる。失敗しても慰めてやる。だから後悔はするな!」
言うだけ言って、紗椰はまたパックのパインジュースをストローで啜る。
「そうか……。そうだよな……。でも失敗したら三沢さんの顔をもう見れない……。一緒に仕事なんかできない……」
「ならバイト最終日に告るんだな。玉砕しても三沢さんに見られずに落ち込めるぞ?」
「失敗前提で言うなよ。どうせなら成就したいんだよ!」
「ならばちゃんと伝えるべきでしょうに」
紗椰に念を押されて俺は黙り込む。その日、俺はバイト最終日に三沢さんに告白することを決めた。
外にはチラチラと雪が待っている。三年生の春は俺にとっても春であってほしい。そんなことを思いながら、俺は紗椰の顔を伺いながら昼食の焼きそばパンにかじりついた。
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