後ろの正面

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僕は、もう一度、 「行かないの?」 と聞いた。 「行かない。」 と答える君。 僕が感じたのは歪んだ優越感。感情の種類で分類するなら、それはまぎれもなく喜びで…自分で自分を嫌悪した。 今までの君は、自分の本当の好みというものが分かっていなくて、どの恋も長続きはしなかった。それが僕には救いだった。 でも今度は違う。今君の恋人になろうとしている人は違う。 まず、先に好きになったのが君の方だった。しかも一度断られている。物静かで穏やかそうな雰囲気も今までの誰とも違う。僕の大切な君。みんなに好かれる君。きっとこの恋は実るだろうと思った。だいたい君の告白を二度断れる人間が居るとも思えない。 「こんな気持初めてなんだ。」 君が嬉しそうに言った。 「知ってる。」 そう、僕は君より先にそれを知っていた。きっと君が君自身の気持ちに気づく前から。たまたま見かけた君が、僕の知らない顔を僕の知らない誰かに見せていた。君はいつにも増してキラキラと輝いていて、僕は、ああ、とうとう見つけてしまったんだな…と思った。 理由なんかない。ただそう理解しただけだ。 恋人は…特別以上。
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