後ろの正面

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僕はいつものように君の話に耳を傾けてうなずく。午後の日差しに透けた髪が綺麗だ…なんて思いながら。 大学のオープンカフェ。こんな季節のこんな時間。僕たち以外、誰もいない。遠くで女子のはしゃぐ声。僕は意識でそれを遮って、君のほんの少しハスキーな声に耳を傾ける。 君は今恋をしている。僕ではない人に。 何度目の失恋だろう。僕は繰り返し君に失恋する。 君が何度恋をして、何度破れても、僕に順番が回ってくることはない。友達だから。友達、ともだち、トモダチ…友達だから。 幼なじみだった。初恋だった。引っ越して離ればなれになって、いつの間にか連絡が取れなくなっても、僕は君のことが忘れられなかった。だから大学で君を見つけた時、神様に感謝さえした。 君も僕を覚えていてくれた。 君は頭も良くてスポーツも出来て、男女問わず人気もので、周りにはいつも沢山の人がいた。そんな君が、僕を見つけると、いつだって彼らを置き去りにして僕に駆け寄って来てくれた。それだけで僕は幸せだと思えた。
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