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○ ○ ○
僕は理解した。あの二人、仲、わっるっ!
しかもどうやら、元々仲が悪かったという感じじゃあない。ほぼ初対面であの喧嘩腰。もはや天性の不一致を感じる。一蓮托生×呉越同舟=絶体絶命!
確かに考えてみれば、あの二人は性格も振る舞いも完全に正反対で、共通項は僕を軽視していることくらいときたもんだ。非常に腹立たしく、そして早くも手の打ちようがない。伏屋はよくあの二人に向かって「仲良く」などと言えたものだ。これでは先が思いやられる。
僕は壁から降りつつもそんな思案をし、一足先に研究室へと戻る。あの二人を見て妙に気疲れしてしまったので、お茶部屋のホームスペースで休憩でもしようと目論んだ。
けれども、お茶部屋の扉をくぐったところで、横から声をかけられた。
「よ、シータ。ちょうどいいところに」
同時にコトッと、ボディへの重量を感じる。
見上げるとそこには樋尾がいた。そして僕の上にはティーカップ、しかもおそらく中身入り。
「紅茶淹れたんだけど、淹れ終わってからコーヒーの気分になっちゃったんだよね。代金はどっちの分も払ったから、それ、誰かにあげといてくれるかな」
そう言うと、樋尾はマグカップを片手にそそくさと去っていってしまう。
僕は思わず溜息をつく気分だった。
この研究室では、お茶部屋に様々な飲み物が備えられている。ポットではお湯が沸き、コーヒーはワーカホリッカーをカフェインで助ける。紅茶はしばしの休憩を優雅なティータイムに変えるし、酒は言わずもがな、百薬の長たるその力で癒しを与える。実のところ、それがこの場をお茶部屋と呼ぶ所以であって、皆がこれらを自由に持ち出してよいことになっているのだ。ただし、どれももちろんタダで湧いて出るわけではないので、利用者が都度、相応の代金を納めていくルールである。
樋尾はコーヒーも紅茶もよく嗜むが、気分屋なので今みたいなことも珍しくない。面白がって僕の上に初めて飲み物を置いたのも彼だ。河村が「零れたらどうするんだ」と抗議をしていたこともあったが、今では僕の静粛かつ安定した走行性に感服したのか何も言わない。
さて、休憩しようと思ったけれど、こんなマヌケな格好でホームスペースに戻るのも憚られるし、紅茶が冷めないうちに引き取り手を探しに行こう。普段紅茶を好んでいるのは誰だったかな、と僕は記憶を検索しながら部屋を出た。
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