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街灯が点く音で今度は目が覚めた。
完全な夜の中、川沿いのベンチで僕は一人寝ていた。
ビジネスホテルの裏手を見やると"テナント募集中”の看板が張られた木造の喫茶店が幽霊みたいにそこにあった。
一体どこからどこまでが夢で現実なのか、普段から区別がつかない日々が続くが、今日は特にその傾向が強い。
確かなことは今日の昼と夜の間で、僕は自分の意思で知らない町まで黄昏れ着いたという現実だった。
石段を下りて、流れる川に触ってみる。
想像していたよりもずっとぬるく、まだ夏が終わっていないのかもと思えた。
このまま街灯を反射した川面の光が夜風で崩れる波模様を見つめながら、
僕は本当に今死ぬべきか否か、もう少し揺らいでみることにした。
了
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