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バス、地下鉄、在来線や新幹線の集まる都心駅の真上、オフィスや百貨店の入ったビルから伸びる形で、このタワーは建っている。最近になって首都圏に建設された、地球の丸みを実際に見ることができるという成層圏展望台ほどではないが、雲を突き抜けて天空の世界に片足を踏み入れる感覚くらいは、このタワーでも味わえる。建築物の高さが国家の保有技術の指標であるという慣習は今も昔も変わらないもので、現にこいつも、世界で何番目かの地上高を誇っているらしい。まあ、建てられて久しい今となっては、訪れる人も少ないのだけれど。
きっと今も昔も、千年前も二千年先も、人類の営みはさほど変わらない。暮らしが劇的に豊かになっても、不可能と言われていた夢の技術が確立されても、人間の本質は変わらないのだ。
――そう、まるで人間のように振る舞う人形が実現されても。
信じられるだろうか。俺の生きる現代では、人形が人間の生活を支えているのだ。人間の形をした、人間でない人工の存在が、俺たちの社会に深く深く溶け込んでいる。そして俺たち人類は、彼らのことを《ディア》と呼ぶ。
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