忘れられない

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「穂積さん、今日は調子良いの?」 いつも個室にこもりがちの穂積さんはこちらに顔を向けてふわりと微笑む。 そのやわらかな笑みに、一瞬この人がなんの問題も持たない一人の美しい女性であると思えてしまう。 「やだ、原田さん。私ここに来てから、ずっと調子は良いんですよ。昔のね、嫌な事を思い出さないの。なんでかしら」 貴方は記憶を手離しているから美しいの?私は過ったそんな皮肉を、唾液と一緒に深く飲み込んだ。
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