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サクラを狙っているのは主にフィルセインだが、収集家という輩も厄介だ。
あれらは、時節などわきまえない。欲しいときに、機会を逃さず狩る。
「この一度で終わりかどうかもわかりませんね。サクラ様、どうかこれまで以上に我々から離れないでください」
厳つい顔をした騎士、カイザルが心配そうにそう言うのに、サクラは神妙な顔で頷いた。
食事のあとは、皆銘々に時間を過ごす。簡単な湯浴みも交代で済ませ、その間もサクラの隣には、誰かが配置されていた。
サクラはイリューザーにブラシをかけてやりながら、クレイセスたちと一緒にいた騎士たちから、襲撃の様子を聞いたりして過ごした。
就寝時間は十時。朝は大体六時には出発するため、起きるのは五時前だ。起床時間に関しては、最奥にいる頃とそれほど変わらないので、苦ではなかった。一日馬に揺られているそれだけだが、体はきついらしく、就寝時間よりも早く眠ってしまう。それでも、体はずっと、揺れている気がした。
今日も早く寝ようと思ったが、うまくいかない。
イリューザーは寝息こそ立てていないものの、疲れてはいるのか、もう寝台の下に伏せてじっとしている。
「眠れませんか」
書き物を終えたのか、サンドラがひょいと顔をのぞかせた。
「ええと……はい。ちょっと、緊張してるみたいです」
「まあ、突然の襲撃でしたからね。しかも見えないとなると、気持ちが悪い。この瞬間も、どこかから見てるのではという気になるのも、仕方がありません」
気持ちを汲むようにそう言ってくれるサンドラに、サクラは頷いた。そう、こうしてる今も、どこかから見られているのではないか……そんな気になるのだ。眠ってしまったら、自分はそれに対処できるかも自信がない。
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