Ⅺ 親征、ダールガット

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「今夜だけ、一緒に寝てください……は、迷惑ですか?」 「それはかまいませんよ。最奥と違って狭いですが、大丈夫ですか」 「大丈夫です」  答えれば、サンドラは微笑み、上着を脱ぐとサクラの隣に潜り込む。 「さあ、目を閉じてください。何が来ても、ちゃんと守ります」  心強いサンドラの言葉に頷き、サクラは目を閉じる。  サンドラのぬくもりに、存在に。  安心して、サクラは意識を手放した。 *◇*◇*◇* 「サクラ様! ご無事のご到着、何よりです」  ガゼルの快活な笑顔と、先発していた騎士たちに迎えられ、サクラは王都を出て二十日後の昼、ダールガットに到着した。予定よりは十日も早く、ガゼルたちも驚いていた。 「サクラ様、お召し替えが済んだらダールガットの警護担当と、地方院の院長、それに商工会の会頭を紹介します」  ガゼルに言われ、サクラは営所の一室を与えられるとすぐに着替え始めた。  ダールガットは、サクラの感覚で言えば「市」のようなものだ。この営所はトルクという、中心街に近い場所にある大きなもので、配属されている騎士の人数も多い。 「少しゆっくり出来る時間を差し上げたいのですが、すみません。サクラ様には今しばらく、お忙しいかと」 「それはサンドラさんたちもでしょう? 大丈夫ですよ、頑張れます」  着替えを手伝ってくれるサンドラにそう言えば、そっと耳下に指を差し入れられる。 「熱は……大丈夫そうですね」  襲撃のあと、微熱があったがそれを押して来た。本人に自覚がない、軽微なものだったが、周囲のほうが気にしてしまう。サクラを護衛していた騎士たちにも、数日前から疲労の色が見え始めていた。 「それより、ほかの人は休めるんですか?」 「それはご安心を。我々はサクラ様とともにおりますが、ほかは休ませています。何気に強行軍でしたからね。それにサクラ様が文句も言わずについていらしたのが、むしろ驚きです」
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