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膝をついているほとんどの者が、「セルシア」を誘うことによって栄誉を得ようとしているのは、サクラにもわかっている。しかし、もうそんなことをしている場合ではないのだと、突き付けなくては。
「しかしながらこの雪では、フィルセインも動けますまい。歓迎の宴を準備しております。長官たちにもお目通りしたいと願う娘たちも多く、どうかご臨席を」
食い下がる男に、サクラはクレイセスたちに見合いが用意されていることを知る。これもまた、すべてが終わってからでもいい話だ。
「雪中にあって、すでに奇襲はありました。そういったことのすべては、この防衛戦が終わったのちにでも」
「まあそう仰らず……」
と話を続けようとした別の男を遮るようにして、サクラは立ち上がった。イリューザーもお座りの姿勢になり、いつでも動ける態勢だ。
「歓迎してくださるというのなら、私に砦を案内してください」
微笑みは絶やさず、サクラは静かに言った。
「取り返した二砦の状況を知っておきたいのです」
「いや……そんなところに子供が……いや、セルシア様が行くような場所では」
ほろっと出た本音に、サクラは失笑する。
「兵の数は、把握されていますか」
「か、数?」
「ええ、数です」
食い下がった二人を交互に見るが、二人ともが顔を見合わせる。
「前回フィルセインは三千を投入しました。今回は、報告によれば一万二千」
「いっ……ちまん……」
「にせん……?!」
ぎょっとする彼らは、それすら把握していなかったのだろう。部屋がざわついたことを思えば、今まで知ろうとしなかったのは、彼らだけではないようだ。
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