Ⅰ 目覚め

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「これは、サクラ様が示された命の色です。セルシアは本人が認識している、世界の命の色を額に戴く」  ユリウスの説明に、あの日が甦る。  真っ白な雪を染めた鮮血。  それこそが、咲羅が認識した命の色だ。  その色を認識させたひとりであるユリウスは、いつもの静謐を纏ってここにいる。 「それから、ひとつだけ申し上げておきます」  見上げると、ユリウスは真剣なまなざしで言った。 「与えられた力を、不用意に行使なさいませんよう。そのお力は、あなた様の命を削って発現するものです」 「ユリウスさんには……わかるんですか? その、わたしが、どんな力を与えられたのか。わたし……実感として、何かを得たというのは、ないんですけど」  言うと、ユリウスは微笑んだ。 「今までの例からすると、そういった側面に遭遇した際、出来るか出来ないかを直感的に認識されるのだろうと思います。あなた様が望まれたのは治癒の力。長い歴史の中でも、ほんの数人しか手に入れることが出来なかった力です。恐らく、与えられているのはその力かと」 「治癒……」  言われて両手を広げてみるが、別に変わったところなど何もない。  どうやって使うのかも、思い浮かびもしない。 「すべて感覚的なものでしかないので、お教えする、というのが難しいのですが。『そのとき』が来れば、サクラ様が自在に出来るものです。ただ、不用意にお使いにならないでください。力を多く行使したセルシアは短命です。こと治癒の力は大きく命に関わると言います。どうかそうならぬよう、周囲にいる私どもを、頼りにしていただきたく」  濃茶の瞳は、いつにない強さで咲羅を見据えてそう言った。  気圧される形で頷くと、少し微笑み、ユリウスは会釈をして退室する。 「さあ、サクラ」  ユリゼラの声に、まだどこかはっきりとしない頭で見上げると。
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