昼と夜の境で愛を紡ごう

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「私、彼と結婚します」 占い師から鑑定の結果を聞いた女は晴れ晴れとした顔で告げた後、さっそうと鑑定室を出ていった。後に残された占い師は、グリーンのソファに身を沈め天井を見上げて大きく息をつく。 女性の前に一人の男性を同じように、能力を使って鑑定をしたから、身体が重くなっている。能力はあっても強いわけではない、相談相手の決断を助けるようなイメージが浮かび、そこからメッセージを受け取るのだ。 「先に視た男性もさっき視た女性と同じイメージが浮かんだ。二人はカップルなんだな」 時間を前後して訪れたカップルは、同じ相談を占い師にしにきたのだ。意図してきたのか、全くの偶然だったのかはっきりしたことは分からない。おそらく偶然だろうと占い師は思っている。 相談に来た男性と女性の心配はお互い同じものだった。 「私と結婚したら彼は不幸になるのでしょうか」 「俺と結婚したら彼女は不幸になるのでしょうか」 二人とも呪いか何かのせいでこうなっているのかと心配していた。能力を使ってみてみたら、呪いどころか二人は祝福されていることに気が付いた。 女性は夜の男に、男性は昼の女に愛されている。そして夜の男は昼の女を、昼の女は夜の男を深く愛している。占い師に相談に来た男性と女性が深く愛し合っているように。 (離れていても決して愛は失せたりしない) (離れていても決して愛は壊れたりしない) (だから安心してお互いの手をとりなさい) 昼の女と夜の男はそろいもそろって同じことを自分に伝えてきた。 「一つ屋根の下で暮らしていても愛のない夫婦、互いに離れていても深く愛し合う夫婦」 ぽつりと呟いて占い師はソファに横になる。今日の占いは店じまいだ。明日になればまたお客が来ると考えながら、うとうととまどろむ。窓の外では太陽が沈み、ゆっくりゆっくり藍の色が広がっていった。
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