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3
「ふうん。悪い奴だね。子供を食べちゃうなんて、ひどい」私は言った。
「そうだね……。男の子は本当に可哀そうだった。今でも、たまに夢に出てくるの。特に、儀式の行われたこの時期にね。頭だけになった男の子が、泣きながら『助けて』って言うの……」ミツさんはそう言って、涙ぐんだ。
そんなミツさんを見て、私は居たたまれない気持ちになった。
「ミツさん。男の子は天国で、ミツさんに『ありがとう』って言ってると思うよ。だって、ミツさんが、自分を食べた悪い奴をやっつけてくれたんだから」私はそう言って、ミツさんの顔を覗き込んだ。
「ありがとう。菜穂ちゃんは優しい子ね」ミツさんは微笑んで、私の頭を撫でた。
ミツさんは、私の言葉で少し元気を取り戻したようだった。
「また来週もいらっしゃい」
帰り際には、いつもの笑顔を見せてくれた。
その翌週。
学校からの帰り道。
今日のお菓子は何かな?
夕暮れの中、わくわくしながらミツさんの家へと向かう。
ミツさんの家が見えた。
そのときだった。
「きゃあ」
後ろの方から、叫び声がした。
私は、驚いて振り返った。
そこには、赤いランドセルを背負った陽子ちゃんがいた。転校当初、私をいじめていたグループのリーダー格の子だ。
陽子ちゃんは、一人の女性と向かい合っていた。女性は後ろ姿しか見えない。陽子ちゃんは女性を見上げたまま、突っ立っているようだった。
どうしたんだろう?
私が不思議に思っていると、女性は陽子ちゃんの両脇の下に手を差し入れ、その身体を高く持ち上げた。まるで親が子供をあやすように。
宙に浮いた陽子ちゃんは女性にされるがままで、微動だにしない。ただ目を見開いて、女性を見ていた。
しばらくして、女性は自分の頭くらいの位置まで、陽子ちゃんの身体をゆっくりと降ろした。
陽子ちゃんの顔が女性の頭で見えなくなった。
その瞬間。
聞いたことのない奇妙な音とともに、女性の頭のてっぺんから真っ赤な液体が噴き出した。女性の足元に、赤い水溜まりがみるみる広がっていく。
何だか嫌な予感がした。
女性がゆっくりと後ろを振り返る。
その顔を見た私は、声を上げそうになった。
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