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 「ふうん。悪い奴だね。子供を食べちゃうなんて、ひどい」私は言った。  「そうだね……。男の子は本当に可哀そうだった。今でも、たまに夢に出てくるの。特に、儀式の行われたこの時期にね。頭だけになった男の子が、泣きながら『助けて』って言うの……」ミツさんはそう言って、涙ぐんだ。  そんなミツさんを見て、私は居たたまれない気持ちになった。  「ミツさん。男の子は天国で、ミツさんに『ありがとう』って言ってると思うよ。だって、ミツさんが、自分を食べた悪い奴をやっつけてくれたんだから」私はそう言って、ミツさんの顔を覗き込んだ。  「ありがとう。菜穂ちゃんは優しい子ね」ミツさんは微笑んで、私の頭を撫でた。  ミツさんは、私の言葉で少し元気を取り戻したようだった。  「また来週もいらっしゃい」  帰り際には、いつもの笑顔を見せてくれた。  その翌週。  学校からの帰り道。  今日のお菓子は何かな?  夕暮れの中、わくわくしながらミツさんの家へと向かう。  ミツさんの家が見えた。  そのときだった。  「きゃあ」  後ろの方から、叫び声がした。  私は、驚いて振り返った。  そこには、赤いランドセルを背負った陽子(ようこ)ちゃんがいた。転校当初、私をいじめていたグループのリーダー格の子だ。  陽子ちゃんは、一人の女性と向かい合っていた。女性は後ろ姿しか見えない。陽子ちゃんは女性を見上げたまま、突っ立っているようだった。  どうしたんだろう?  私が不思議に思っていると、女性は陽子ちゃんの両脇の下に手を差し入れ、その身体を高く持ち上げた。まるで親が子供をあやすように。  宙に浮いた陽子ちゃんは女性にされるがままで、微動だにしない。ただ目を見開いて、女性を見ていた。  しばらくして、女性は自分の頭くらいの位置まで、陽子ちゃんの身体をゆっくりと降ろした。  陽子ちゃんの顔が女性の頭で見えなくなった。  その瞬間。  聞いたことのない奇妙な音とともに、女性の頭のてっぺんから真っ赤な液体が噴き出した。女性の足元に、赤い水溜まりがみるみる広がっていく。  何だか嫌な予感がした。  女性がゆっくりと後ろを振り返る。  その顔を見た私は、声を上げそうになった。
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